未遂と中止について(未遂編)
犯罪をしてしまった、けど、バレそうになったから途中でやめた。こういう場合について法は特別な規定を用意しています。今回は犯罪にあたる行為をしたが結果発生前に終わった場合にあたる未遂について紹介したいと思います。
未遂とは
犯罪が完結するまでの間には、犯罪を実行してからその犯罪の結果が発生するまでの一連の過程があります。未遂になるのは犯罪を実行したもののその犯罪の結果が発生しなかった場合です。未遂の場合にどうなるかについて刑法は一般的な規定を定めています。
刑法第44条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
つまり、未遂が罰せられることになるかどうかは未遂を罰する定めがあるかどうかによることになります。
未遂が成立するためには
未遂について刑法43条は「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」と定めていますので、未遂にあたるためには、犯罪の実行に着手したこととこれを遂げなかったことの2つが必要ということになります。
(1) 犯罪の実行に着手したこと
犯罪の実行に着手したと認められるためには、その犯罪を実行しようとする故意とその犯罪の要件に該当する行為の一部が開始されると客観的に認められること(諸説ありますが一般的にはこう理解されています。)が必要です。
例えば、詐欺罪を例に簡単に紹介すると、お金を貸してほしいという発言をするにあたり、ちゃんと返すつもりがあれば故意がないということになるのに対し、返すつもりがなくだまし取るつもりで言っていたのであれば詐欺罪の故意があることになります。また、詐欺の故意をもった上で発言をしていればこの発言により犯罪の要件に該当する行為の一部が開始されたと判断されることになります。
(2)これを遂げなかったこと
これは刑法に定められている結果が発生しなかったことを意味します。先ほどの例で言いますと、相手が返すつもりがないことに気づいて発言者にお金を貸さなかった場合や、返すつもりがないと気づいたものの発言者のことがあわれに思ってお金をあげるつもりでお金を貸した場合には「人を欺いて財物を交付させた」という刑法に定められている結果が発生しなかったということになります。
ここで、一つ特殊な例を紹介しますと、コンビニで万引きをしようとしたところ、店員に気づかれたため、何も盗らずに逃げ出そうとしたものの、店員に追いつかれたので逃げるために店員を殴って店員を転倒させて大ケガをさせて逃走した場合です。つまり、窃盗としては物を何も盗っていないので未遂ですが、店員を怪我させてしまっています。この場合には、窃盗罪としては未遂のように思えます。しかし、ここで問題となるのは強盗致傷罪です。強盗致傷罪は、人の生命身体を第一に考えて規定された犯罪と理解されています。そうすると、先ほど紹介した例では物は盗っていませんが店員に怪我をさせてしまっているので強盗致傷罪は既遂ということになります。このように、どうすると既遂になるか判断が複雑なものがあることに注意が必要です。
未遂の場合にはどうなるか
犯罪行為が未遂に終わった場合はどう処理されるでしょうか。
刑法43条で「その刑を減軽することができる」とされています。つまり、刑を減軽してもしなくてもよいということになりますので、最終的な判断は裁判所に委ねられることになります。
まとめ
以上で紹介したように、一般的に未遂と呼ばれるものを法律的に見ていくとこのようにいくつもの法律がかかわっていることになります。また、その判断においては判例や学説が蓄積されているのでどこまでが未遂でどこからが既遂か、何をすることで未遂、または、既遂になるかという点の判断は専門的な知識が必要です。
当所では、依頼者様の事情をしっかりと確認し、犯罪行為をしてしまっていたとしても捜査機関や裁判所に適切に判断してもらえるように積極的に働きかけてゆきます。犯罪自体は未遂で終わったけどやったことの罪悪感から自首をしようか迷っている。自分のやったことが犯罪にあたるかわからないけど不安だ。当所では、そんな方の相談も数多く受けています。
まずは、お気軽にご相談ください。