少年事件の処分
先日、少年事件の流れについてご説明いたしました。
少年事件では、少年審判(単に「審判」とも言います。)が開かれた場合、保護観察や少年院送致といった保護処分という処分を受ける可能性があるというお話をしました。
今回は、少年審判で言い渡される保護処分について解説していこうと思います。
保護処分とは
⑴ 少年審判の目的
まず、少年審判で下される処分は、「保護処分」というものです。
少年審判でも当然に懲役刑や罰金刑といった「刑罰」が言い渡されるわけではありません。
その理由としては、少年法では、「少年の健全育成」を目的とし、非行をしてしまった少年の非行性(問題点)をなくし、再非行を防止することを目的としているからです。
少年審判では、少年が非行に陥った原因を見つけ出し、それを除去するために少年の資質や環境の両面から調査をしたうえで、最終的に少年に処分を下すことになります。
したがって、少年審判で言い渡される保護処分は、罰として科される刑罰とは性質が異なるものになります。
保護処分には①保護観察、②児童自立支援施設または児童養護施設送致、③少年院送致の3種類があります。
⑵ 保護観察
保護観察とは、少年を少年院などの施設に収容することなく社会の中で生活させながら、保護観察官や保護司の指導監督によって、少年の改善更生を図ろうとするものです。
そのため、保護観察の場合は、学校に通い続けたり仕事をし続けたりすることも十分可能です。
保護観察には①一般保護観察、②一般短期保護観察、③交通保護観察、④交通短期保護観察という4つの種類があります。
①一般保護観察であれば概ね1年、②一般短期保護観察であれば概ね6か月以上7か月以下の期間、③交通保護観察であれば概ね6か月、⑤交通短期保護観察であれば概ね3か月以上4か月以内の期間が、保護観察の期間となります。
他方で、18歳以上の少年(特定少年)については、ⅰ6か月かⅱ2年間の保護観察と18歳未満の少年とは異なった規定になっています。
保護観察中は、健全な生活態度を保持すること、指導監督を誠実に受けることなどの一般遵守事項と、保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項を守る必要があります。
遵守事項に違反した場合、少年院等に行くことになる場合もあります。
⑶ 児童自立支援施設または児童養護施設送致
児童自立支援施設とは、環境上の理由により生活指導等を要する児童に対して、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設のことです(児童福祉法44条)。
また、児童養護施設とは、保護者のいない児童、虐待を受けている児童等その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせてその自立を支援することを目的とする施設です(児童福祉法41条)。
これらの施設の入所対象者は、18歳に満たない者とされています(児童福祉法4条)。
しかし、収容年齢の制限の関係で、義務教育中の少年に対して行われることがほとんどであるのが実情です。
また、これらの施設は、強制的に収容する少年院とも本質的に異なります。
児童自立支援施設や児童養護施設は、できる限り家庭に近い落ち着いた雰囲気の生活の中で処遇しようとする開放施設です。児童自立支援施設等では、収容された少年は原則として施錠された部屋に入れられることはなく、施設の周囲の扉なども施錠されておりません(開放処遇の原則)。
児童自立支援施設では、児童の性向を改善し、社会の健全な一員として復帰させるため、児童自立支援専門員や児童生活支援員が一つの寮舎で年代の異なる12名程度の児童と寝食を共にしながら、生活指導や学科指導、教育指導等がなされることになります。児童自立支援施設は、児童が規則正しい生活を送りながら良好な人間関係を形成する力や生活に最低限必要な学力、社会常識を身に付けられることを目指しています。
(全国児童自立支援施設協議会インターネットサイトのリンク)
児童養護施設は、児童指導員や保育士等が児童と生活を共にし、それと共に生活指導員が生活指導を行い、職業指導員が職業指導を行うことになります。児童養護施設では、より家庭に近い生活環境の中で児童を生活させた形での養護を目指す取り組みも進められています。
(全国児童養護施設協議会インターネットサイトのリンク)
⑷ 少年院送致
少年院とは、矯正教育その他の必要な処遇を行う施設です。
強制的に少年を少年院に収容し、少年の自由を拘束する処分ですので、保護処分の中では最も強力な処分となります。
少年院の中では、規律ある生活を送らせて矯正教育を行い、ルールに従うことの重要性を指導していくことになります。
少年院は、閉鎖施設であり、特別の場合以外は外出や外泊はできません。社会貢献活動や野外活動といった特別活動指導の場合(少年院法29条)や近親者の葬式、負傷・疾病により重態である近親者の訪問で少年院の院長が許可した場合(同法110条1項)には、外出等をすることができることがあります。
少年院には第1種から第4種があり、少年の年齢や心身状況、非行傾向などによって区分されています。
第1種:保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満の者
第2種:保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ、概ね16歳以上23歳未満の者
第3種:保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満の者
第4種:少年院において刑の執行を受ける者
少年院の中で生活する期間は、20歳に達するまでが原則です。
ただ、実際の収容期間については、家庭裁判所の処遇勧告と少年鑑別所が決定した矯正教育課程、少年院での個人別矯正教育計画に基づいて決まることになります。
少年院では、矯正教育として、①生活指導、②職業指導、③教科指導、④体育指導、⑤特別活動指導などが行われます。
少年院では日課が定められており、起床時間や就寝時間、食事の時間等、教育や余暇にあてる時間が決められています。そのため、自由に外出や外泊はできませんし、少年院内の職員の指導や監督を常に受ける状態で過ごすことになります。