痴漢事件とは

痴漢とは、主に公共の場所で、相手に羞恥心を抱かせたり、不安にさせる行為の総称であり、その具体的な行為の態様によって、法律的にも、さまざまな犯罪が成立します。たとえば、着衣の上からや直接に他人の身体に触れる、自分の身体を押しつける、卑わいな言動をするなどの行為は、都道府県の迷惑行為等防止条例違反の罪や強制わいせつ罪等が成立し得ますし、その行為によって被害者に傷害を負わせた場合には、強制わいせつ致傷罪等が成立し得ます。また、公共の場所で着衣を脱いで裸体を見せるなどの行為は、公然わいせつ罪が成立します。

強制わいせつ罪は、6か月以上10年以下の懲役に処せられるものとされ(刑法176条)、強制わいせつ致傷罪は、無期または3年以上の懲役に処せられるものとされています(刑法181条1項【裁判員裁判対象事件】)。また、公然わいせつ罪は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられるものとされています(刑法174条)。

さらに、迷惑行為等防止条例違反の罪は、都道府県によって内容が異なる場合がありますが、例えば東京都条例の場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金)に処せられるものとされています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項1号等)。

痴漢事件の刑事弁護プラン

痴漢行為、特に、混雑した公共交通機関内での行為は、行為が目撃されにくく、被害者も驚きや不安、恐怖のあまり、犯人を取り違えてしまう可能性が高いといえます。しかも、犯人との疑いがかけられた方にとっても、まったく予想外の出来事ですから、動転したまま身柄を拘束され、強硬な取調べを受けたり、「罪を認めれば早く家に帰れる」などといった誘いに負けてしまったりして、事実とはまったく異なる供述調書の作成に応じてしまう例も少なくありません。

そのため、痴漢事件においては、身柄拘束後、一刻も早く弁護士がご依頼者様に面会して、詳細にご事情をお伺いし、取調べへの対応の方法等についての的確なアドバイスを受けることが極めて重要です。その上で、捜査機関が被害者の言い分のみを一方的に鵜呑みにしてしまっているような場合には、客観的証拠を前提として、ご依頼者様の言い分こそが正しいことを捜査機関・裁判所に主張し、捜査機関の主張が十分な証拠に裏付けられておらず、犯罪の嫌疑がないことを指摘して、不起訴処分や無罪の獲得を目指す弁護活動を行うことになります。

これに対し、痴漢行為をしてしまったこと自体には争いがないときは、犯行が偶発的で、過去に同様の前科前歴がなく、示談が成立したような場合には、早期の釈放や不起訴処分を獲得できる可能性があります。したがって、一刻も早く(可能ならば逮捕される前に)、弁護人を通じて、被害者に謝罪の意思をお伝えし、治療費等を弁償するなどして、示談成立に向けた努力を尽くすことが非常に重要です。

最近は、性犯罪が被害者の心身に非常に深刻な傷を残す結果になることが社会的にも認知されるようになり、それに伴い、性犯罪対する厳罰化が進んでいます。特に、被害者にケガを負わせてしまったような場合(強制わいせつ致傷罪の場合)には、裁判員裁判の対象事件でもあり、一般的に、身柄拘束が非常に長期化しやすいだけでなく、実刑判決を受ける可能性も相当程度高まりますので、示談成立に向けた努力を全力で尽くす必要があるといえるでしょう。

他方で、犯行が計画的である場合、組織的犯行の場合、危険性の高い犯行態様の場合、同種の前科前歴があったり、そうでなくても犯行が常習的である場合、被害(ケガ)の程度が重い場合などは、検察官により起訴の判断をされる可能性が高まります。仮に起訴されたとしても、示談成立に向けた努力を尽くすことはもちろんのこと、ご家族のサポート等により二度と同じ過ちを繰り返さないような環境を整えること等によって、執行猶予判決を得る可能性を高めることができる場合も少なくありません。

精神的なトラブル等から、ご自分の意思だけでは性的衝動をうまくコントロールできず、痴漢行為をやめられない状況に陥っていると思われる方については、そのような状況を自覚し、専門の医療機関による治療等に努めることも大きな意味があります。新宿清水法律事務所では、そのような専門の医療機関をご紹介し、受診に付き添う等のサポートも行っています。