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破産手続開始決定と破産者の義務

破産手続開始決定と破産者の義務

破産をすると資格を失うという話は聞いたことがあるかもしれません。当所でも破産による資格制限に関連した話題として復権について紹介をしています。もっとも、破産により受ける影響はそれだけなのでしょうか。今回は、破産手続開始決定により生じる破産者の人的な義務について、破産法にある条文に即して紹介することにします。

個人破産・法人破産に共通すること

⑴ 説明義務

破産法は、破産管財人、債権者委員会、債権者集会の請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならないとしています(破産法40条1項柱書)。そして、この説明義務がある人として、以下の定めをしています。

 

破産法40条1項(柱書略)

1号 破産者

2号 破産者の代理人

3号 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人

4号 前号に掲げる者に準ずる者

5号 破産者の従業者(第2号に掲げる者を除く。)

2項 前項の規定は、同項各号(第1号を除く。)に掲げる者であった者について準用する。

 

破産者とは、債務者であって、破産手続開始の決定がされているものを言いますから(破産法2条4項)、破産開始決定を受けた場合に、上で紹介した人に該当する人は、破産法上の説明義務を負うということになります。

この説明義務に違反した場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはその両方に処せられ(破産法268条1項2項)、また、免責不許可事由にも該当してしまいます(破産法252条1項11号)。

⑵ 重要財産開示義務

破産法41条は、破産者に、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出することを要求しています。運用上、破産申立ての際に提出すべき書面としてこうした財産について記載した書面の提出を求めていますので、提出しないということは一般的には考えにくいところではあります。もっとも、注意すべきこととして、提出した書面が虚偽であるような場合には、やはり重要財産開示義務違反となってしまいます。重要財産開示義務違反をした場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはその両方に処せられ(破産法269条)、また、免責不許可事由にも該当してしまいます(破産法252条1項11号)。

⑶ 郵便物の管理

破産事件が係属している裁判所(破産開始決定をした裁判所というイメージで問題はないと思います。)は、(例えば、破産者の取引関係の把握など)破産管財人の職務をやりとおすために必要があると認めるときは、破産者に宛てた郵便物等を破産管財人に配達するようにお願いすることができます(破産法81条1項)。そして、破産管財人に届いた郵便物は、破産管財人が見ることができます。

この郵便物の対応については、今の破産法の下では必ずされるというものではありませんし、必ずしも破産開始決定と同時になされるものでもありません。しかし、郵便物等が破産管財人の所に届けられて見られてしまうという可能性があるということは認識しておくべきでしょう。

個人破産の場合

以上で説明したことのほかに、個人破産の場合は更に以下の制限を受けることになります。

⑴ 居住に係る制限

破産法は、破産者の住む場所についても定めています。

 

破産法37条1項

破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。

 

つまり、破産者が居住地を離れるためには、裁判所の許可を得る必要があるということになりますので、許可を得ない限り居住地を離れることができなくなります。

違反すると、「その他この法律に定める義務に違反した」として、免責不許可事由にも該当する場合があります(破産法252条1項11号)。

⑵ 引致

さらに、裁判所が必要と判断した場合には、破産者の引致、すなわち一定の場所へ連行されてしまうこともあります(破産法38条1項)。これは、破産者が、破産の際に、破産財団と呼ばれるものに入ることになった財産を占有して破産管財人の職務を妨害するなど、破産者を引致する必要があると判断するようなことがあった場合に行われることが考えられます(なお、不正の手段により、破産管財人の職務を妨害すると免責不許可事由にも該当してしまいます(破産法252条1項9号)し、偽計や威力を用いていた場合には3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金またはその両方に処せられます(破産法272条)。)。普通の破産者が引致されるということは考えにくいことではありますが、法律上はこのような定めまで用意されているのです。

⑶ 資格制限

最初に紹介したように、様々な資格制限もありますが、これは復権について紹介した当所コラムで説明していますのでそちらをご参照ください。

法人の場合

法人の場合、解散の原因として破産開始決定が定められているものについては、破産手続の開始により解散することになります。これは、法人が財産法上の活動をするために設立されるものですが、破産手続開始決定を受けることはその基盤となる財産的な基礎を失ったということを意味する、ということにより規定されています。

まとめ

今までに見てきたように、破産開始決定がされると破産者は様々な制限を受けることになります。破産手続開始決定後には、上記の制限や義務が課せられることになりますし、違反した場合には免責不許可となったり罰せられたりすることもありますので、こうした点も踏まえて破産という選択肢を取るかどうか検討する必要があります。

当所では、依頼者様からの話を伺い、破産者が負う義務などの破産者が負うリスクなども踏まえつつ、依頼者様がどのような選択をするのが一番良いか検討してゆきます。そして、破産という選択を取る場合には、破産者が負う義務や注意点についても丁寧に説明してゆきます。

破産のリスクも含めてどうすべきか迷われている方のご相談も歓迎ですのでまずはお気軽にご相談ください。

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