同時廃止について
破産するということを決意した場合、少しでも早く破産手続が終わって再出発したいと思うことと思います。そんな中で、一定の要件を満たす人の場合は破産手続が早く進むためのルートである同時廃止に進むことができます。では、一定の要件とは一体何でしょうか。
今回は、同時廃止について紹介します。
同時廃止の条文
破産法は、同時廃止について以下の条文を定めています。
破産法第216条(破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定)
1項 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
語弊をおそれずに一言でいえば、お金がない場合は破産手続を開始するのと同時に終了するということになります。以下では、もう少し詳しく見ていきます。
破産財団の概要
⑴ 破産財団とは
破産財団とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの(破産法第2条14項)を言います。
この破産財団の範囲については、破産法34条に定められています。
1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
つまり、破産者が持っている財産のすべてや破産手続開始前に生じた原因(例えば、破産手続開始前に1年後に返してもらう約束でお金を貸したという貸金債権)に基づいて、行うことがある将来の請求権(先ほどの例でいえば、貸してからまだ1年経っていないため、1年経つまで請求できませんので将来の請求権となります)が、原則、財団債権になります。
ただし、同条3項に例外についての定めがあります。
3項 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
1号 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭
2号 差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第132条第1項(同法第192条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
民事執行法第131条3号は「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」と定めています。つまり、破産法第34条3項1号にある金銭に2分の3を掛けた金銭というのは、破産者の生活を確保するために破産財団には入れずに破産者が自由に使うことができる財産として定められたものということになります。
差し押さえることができない財産もまた破産財団には属しないとされていますが、ただし書に書かれているもの、一言でいえば、差押ができるようになったものは原則に戻り破産財団に属することになります。
こうした例外にあたるものでない限りは破産財団に属することになります。
⑵ 同時廃止との関係
ここまで破産財団について見てきましたが、最初の同時廃止の話に戻れば、破産手続に必要な費用を、上の説明で見てきた破産財団の中で払えるかどうか判断して、足りなければ同時廃止をすることができるということになります。
同時廃止の効果
同時廃止が認められると、破産手続を開始すると同時に破産手続廃止の決定、つまり破産手続を終了することになります。これにより、破産者は破産財団の管理処分権を回復します。言い換えれば、破産財団に含まれていたために破産者が使うことができなくなっていた財産を自由に使うことができるようになります。
まとめ
同時廃止は、破産手続に必要な費用が払えないために、破産開始と同時に破産手続が終了し、財産をまた使うことができるようになるという制度です。もっとも、免責や復権といった効果については、同時廃止によっては得られませんのでそれらの効果を得るためにはそれぞれ必要な手続きを進めていくことになります。
当所では、破産という選択を取ることになった場合には、依頼者様の不利益を少しでも軽減できるよう法律の定めを適切に利用し、依頼者様の望むゴールに向けて迅速に行動してゆきます。
まずは、お気軽にご相談ください。