サイトアイコン 新宿清水法律事務所

破産後の復権について

破産後の復権について

今日の新型コロナウィルスによる緊急事態宣言で仕事をすることができず、破産という選択肢を取らざるを得なくなったという個人の方もいるかと思います。破産をすると様々な資格制限があるという話も聞いたことがあるかもしれません。もっとも、日本の破産法は破産者に対して制裁をもって臨む懲戒主義の発想には立っていないとされていて、そうした考え方から、破産という選択肢を取ることになった人の資格制限も永久的なものにはされていません。そこで、今回は資格の復活の制度である復権について紹介したいと思います。

復権とは

⑴ 復権とは

 破産をした場合には様々な資格制限があります。様々な国家資格には、それぞれ該当する法律で破産をした人に対する資格制限について規定が設けられていて、こうした規定がある国家資格に、破産者がなることができません。また、国家資格以外にも、後見人(民法第847条3号)、保佐人(同法876条の2第2項)、遺言執行者(同法1009条)、持分会社の社員(会社法607条1項5号)など、私法上も様々なところで制限があります。

 他方で、復権の効果については、破産法255条2項で「前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。」とされていますので、上で挙げたような条文(他にもいろいろあります。)の定めによることになります。

 ⑵ 復権のイメージ

では、具体的にどういう時期に資格制限を受けることになるのでしょうか。破産から復権までのイメージをつかみやすい規定として、弁護士法を紹介します。弁護士法の場合は、弁護士法7条4号に「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」と規定されています。つまり、破産手続開始の決定を受けてから復権を得るまでの間は、弁護士となる資格を有しないことになります。

そして、復権した場合には、弁護士法7条4号の「復権を得ない者」から外れることになり、破産によって弁護士となる資格を有しない状態から脱することができるのです。

なお、民法など多くの法律では、「破産者」と表記されているものが多いですが、「破産者」については、破産法2条4項で、「債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているもの」と定義されていますので弁護士法と基本的なイメージは一緒と思っても大きな問題はないかと思います。

 以上を見ると、復権の制度は、破産者として受けている資格の制限がなくなる制度ということが分かります。

復権を受けるためには

どういう場面で復権を受けることができるかという点について、破産法は、当然復権(条件を満たせばそれだけで復権すること)と申立てによる復権の2つの制度を用意しています。

 

⑴当然復権

 当然復権の制度に関して、破産法は、以下の定めをしています。

破産法第255条1項

破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。

1号 免責許可の決定が確定したとき。

2号 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。

3号 再生計画認可の決定が確定したとき。

4号 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。

(※2項以下省略)

1号と3号は、条文に書いてあるとおりですので、特に説明はしませんが、2号と4号については、若干の補足をします。

 2号の「第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定」とは、破産債権者の同意による破産手続廃止決定(これを同意廃止といいます。)のことです。同意廃止の詳しい説明は、機会があればすることにします。

 4号の「第265条の罪」とは、詐欺破産の罪のことで、債権者を害する目的で第265条各号の定める行為をすると10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。破産開始決定の後、この詐欺破産の罪で有罪の確定判決を受けることなく10年間経過すれば復権することになります。

以上の1号から4号のいずれかを満たせば、当然に復権することができます。

当然復権なのでもしかすると実感がわかないかもしれません。もし、復権されているかどうしても気になる場合は、有料ではありますが自分の本籍地の市区町村役場で身分証明書を取り、そこに、「破産宣告又は破産手続開始決定の通知を受けていない」といった形で書かれていれば復権していることが分かりますので試してみるのも一つの手かもしれません。

 

⑵ 申立てによる復権

 申立てによる復権の制度に関して、破産法は、以下の定めをしています。

破産法第256条1項

 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。

(※2項以下省略)

このように定められています。条文上は簡単に書いていますが、実際のところ、債務の全部について責任を免れるということは、破産者が借金全額返済する、破産債権者に債務を免除してもらうなど様々な方法で債務の全部の責任を免れないといけないということです。

免責許可決定が出ているのであればそれにより当然復権となるので、申立てをしないといけない場合ということは免責もされていない中で債務の全部の責任を免れないといけないということを意味するのでとても大変であることが分かります。

なお、申立ての場合には、復権の申立てがあったということが公告され(同条2項)、3か月間破産債権者に意見を述べる機会が与えられたうえで(同条3項)、最終的には復権の決定が確定してから復権することになりますので申し立ててから復権するまで時間がかかります。

まとめ

今回、破産して資格の制限を受けた後も、復権すれば制限がなくなること、復権するための方法などを見てきました。復権のために申立てをするのはハードルが高く、当然復権の制度は、何かしらの制度と連動しているものが多いことが分かったのではないでしょうか。

 当所では、今まで見てきたような復権までのハードルも踏まえて、依頼者様がどのような対応をするのが一番良いか判断し、依頼者様が破産という選択肢を取り、当所の弁護士に依頼した場合には、依頼者様が再出発することができるよう、適切かつ迅速に手続きを進めてゆきます。

 まずは、お気軽にご相談ください。

Follow me!

モバイルバージョンを終了