「示談」とはそもそも何か
犯罪により被害を被った被害者は、受けた損害について、犯人である加害者に対して、民法第709条が定める不法行為に基づく損害賠償請求権を取得することになります。
被害者がこの権利を行使して損害の回復を現実のものにするためには(金銭を実際手元に手に入れるまでには、という意味です。)、一般的には、弁護士へ依頼して民事裁判を提起し、請求認容判決を取得した上で犯人の財産を調査し、差押え対象となる財産の存在が明らかになった場合に初めて強制執行をして判決で認容された損害額を回収することができるようになります。その場合でも損害全額を回収できる保証はありません。被害者はこの段階に至るまでに弁護士費用や裁判費用などの相当なコストと時間をかけることになります。
示談と被害弁償との相違
示談と被害弁償の区別基準は、被害者から宥恕の意思表示を頂けているか否かによります。宥恕がある場合には示談、無い場合には被害弁償となります。両者は被害者の被害感情に大小で大きな差違があると評価されます。
犯人の立場からすれば、可能な限り、被害弁償に留めずに示談の成立を目指すべきです(その理由は刑事手続の段階に応じて後述します)。
示談からさらに一歩先へ(告訴の取下げ、被害届の取下げ)
事案により示談に留めずにさらに進んで告訴の取下げや被害届の取下げまで被害者に協力を求める必要がある場合があります。
被害者の立場からすると、告訴の取下げや被害届の取下げは犯罪自体が無くなってしまうかの印象を受けるため、強く抵抗される方が多いのが実際です。
逆に言えば、告訴の取下げや被害届の取下げまで被害者の協力を得られることができれば、それは被害者の処罰感情が限りなく小さくなったことを示すため、刑事処分に与える影響は大となります。そもそも罪によっては告訴が訴訟条件となっているため告訴が取り下げらると検察官は同罪での起訴はできずに不起訴処分とせざるを得なくなります。
示談の刑事手続きの各段階に与える影響
[su_dropcap style=”light” size=”1″]1[/su_dropcap]逮捕前(逮捕されると最大72時間の身柄拘束が継続)
示談の成立により、逮捕の必要がないとして逮捕状発布の要件を満たさない方向に働きます。
[su_dropcap style=”light” size=”1″]2[/su_dropcap]勾留前(勾留されると最大25日間の身柄拘束が継続)
示談の成立により、勾留の理由のうち罪証隠滅のおそれや勾留の必要がないとして検察官による勾留請求を止めさせたり、検察官から裁判官に対する勾留請求を却下させる方向に働きます。
[su_dropcap style=”light” size=”1″]3[/su_dropcap]起訴前
起訴権限は検察官のみが有しています(刑事訴訟法247条)。
そして、検察官は起訴するか否かを情状を考慮して決定することができます(刑事訴訟法248条)。示談の成立は、有利な情状となりますので検察官に不起訴処分をしてもらう方向に働きます。
[su_dropcap style=”light” size=”1″]4[/su_dropcap]保釈請求時
示談の成立は起訴後保釈請求をする際にも罪証隠滅のおそれがないことを示す事情として働き、また職権保釈を発動してもらう根拠となるため、保釈請求を認容してもらう方向に働きます。
[su_dropcap style=”light” size=”1″]5[/su_dropcap]判決時
示談の成立は、裁判官が執行猶予を付すか否か、量刑をどうするかを判断する上で有利な情状として取り扱われることになり、総じて刑が軽くなる方向へ働きます。
新宿清水法律事務所の対応
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