皆様、こんにちは。
お花見の季節がやって参りましたね。
うちの事務所からすぐの新宿御苑の桜も7分咲きになって来たようです。
お花見といえば、出会いと別れの季節です。
今回は「別れ」に関する法律問題に触れてみましょう。
別れに関する法律問題といえば、ずばり相続問題です。
今回は、相続問題が顕在化してしまった場合にはどうなってしまうのかを簡単にご説明したいと思います。
結論を先出しますと、相続問題が起こって紛争が顕在化しますとその解決までに、大変な時間・費用・労力がかかります。
今回の記事を読んで頂くことで残される相続人の方々のため、生前にできる手当てを検討して頂ければと思います。
被相続人が亡くなってから相続人が対処せねばならない当面のスケジュールは下記のとおりです。
- 7日以内に死亡届の提出
- 相続を知った時から3ヶ月以内に相続を単純承認するか、限定承認するか、放棄するかの選定
- 4ヶ月以内に所得税・消費税の準確定申告
- 10ヶ月以内に相続税申告
- 相続開始及び減殺対象事実を知った時から1年以内の遺留分減殺請求
このとおり被相続人が亡くなってから相続人は状況に応じて様々な手続きを取らなければなりません。
以上のスケジュールとは別に相続人が複数存在して、なおかつ遺言が存在していない場合には、相続人全員で「遺産分割協議」と呼ばれる被相続人の相続財産を分割するための話し合いをしなければなりません。
その遺産分割協議では下記事項を確定し、遺産分割協議書と呼ばれる書類を作成した上、同書に則って財産を分割していくことになります。
- 相続人の範囲
- 相続財産の範囲及び評価(適格性、分割対象性、帰属性、存在性及び評価時点をいつとするか)
- 分割割合(指定・法定相続分、特別受益・寄与分の評価)
- 分割方法(現物分割、代償分割、換価分割のどれを採用するか)
以上が話し合いでまとまらないと協議は決裂となり、次は裁判所に対し、調停・審判を申し立てていかねばなりません。
ところで、遺産分割には時間的制約はないため協議の開始時期や解決時期等全てが自由です。つまり、ある相続人が協議に協力しない場合には時間だけが過ぎていつもまで何も解決しないということになりかねません。このことは裁判所における調停手続きも協議の延長であるので同じことが妥当します。
他方で、審判は、裁判所が白黒一刀両断的に結論を出してくれますが、相続人の誰かに不満が残ると審判に対して不服申し立てがなされ、また関連する別の裁判が起こされたり等、相続問題の最終的な解決まで長期化する可能性があります。
以上の協議→調停→審判→不服申立等を経た場合の実際にかかった時間を私が扱った過去の事例に沿って御紹介させて頂きますと、相続後の調査に3ヶ月、協議で6ヶ月、調停で13ヶ月、審判で4ヶ月、不服申立てや関連訴訟等で12ヶ月、以上合計38ヶ月(3年と2ヶ月)というケースがございました。
また、以上の一連の流れを経た場合の弁護士費用の目安ですが(※個別ケースにより様々ですのであくまで目安とご理解ください)、遺産分割協議の着手金30万円~50万円、調停着手金30万円~50万円、審判着手金30万円~50万円、日当 裁判所への出頭ごとに1回あたり3万円~5万円、弁護士報酬として経済的利益の10%となります。なお、弁護士費用とは別途、裁判費用、鑑定費用、交通費、郵便代等の実費が別途発生します。
このように相続問題が顕在化し、かつ長期化することで、どのようなデメリットが生じているのでしょうか。
まず、紛争継続中に相続が発生し法律関係が複雑化することが考えられます。つまり、遺産分割未了の間に相続人が死亡することで先の相続の当事者が増えてしまい、その分、紛糾する可能性が高まります。
次に、不動産や有価証券の価値が下落するリスクを指摘できます。また、取得希望者が誰もおらず相続人間で財産の押し付け合いとなった場合には、換価分割という手法が取られ、いわゆる時価より著しく低額での処分を余儀なくされ相続人全員が経済的な不利益を被る結果となり得ます。
さらに、遺産管理費用の増大により相続財産でどこまで負担するかという新たな火種が生じます。
最後に、先に述べた通り、紛争が長期化すればするほど弁護士費用は一般に増額してしまいます。
生前に何の対処をされないと相続人へ以上の負担をさせることになるわけです。
では、相続問題を回避するためにはどうしたら良いのでしょうか。
今回は長くなって参りましたので、具体的な対処法については改めて続編で書きます。
弁護士 清水 信寿
(新宿清水法律事務所 所長)